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工藤とカレーを食べ終えて食堂を後にする。
昼食後もせわしなく働いてあっという間に19時を回る。
「煌人さん、そろそろ知事の屋敷に向かわないと間に合いません。」
工藤が腕時計に視線を向けて俺に言葉をかけた。
その言葉に俺もパソコンから腕時計に視線を向けた。
「ふ~。
そうだな、行こうか。」
工藤に答えてパソコンの電源を切った。
星野関係のことで出かけるときには必ず俺の車。
それを最近は工藤が運転することが増えた。
工藤が運転をしてくれている間に車でしか出来ない仕事をする。
どこかへ電話をかけたり、書類の確認をしたり。
今日も工藤が運転をしてくれている間に電話を2件かけた。
その間にレクサスはあっという間に屋敷の前に到着した。
来客用の駐車場にレクサスを駐めて、工藤と車から降りる。
車を降りる頃には玄関の前に執事の伊部さんの姿が見えた。
……本当に、伊部さんはよく教育されている。
代々轟家に仕えているらしいから、幼いころからの教養なんだろうか。
「星野様、お待ちしておりました。
客間へどうぞ。」
伊部さんの後を着いて歩く。
相変わらずの和豪邸。
通される部屋はいつもと同じ客室。
和豪邸だが、その部屋は洋室。
絨毯張りで大理石のテーブルに革張りのソファ。
これだけでいくらするのか……
ソファに座ると、伊部さんがいつのもようにコーヒーを出してくれた。
「いつも有難うございます。」
「……いえ。」
俺の挨拶に無表情の伊部さんは静かにそう答えただけだった。
「旦那様はもういらっしゃいます。
暫くお待ちください。」
伊部さんは会釈をして下がった。
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