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日曜の朝から、また俺の仕事用の携帯が部屋で鳴り響いた。
ベッドの中からテーブルに置いている携帯に手を伸ばした。
「……もしもし」
少し掠れた声音になった。
【あ、星野事務長。
お休みのところすみません。】
女性の声だった。
「いや大丈夫だ。」
ベッドから身体を起こした。
【オペ室の看護師、鍵田です。
もうすぐ緊急オペが始まるんですけど。
並びで別の緊急オペをすでに開始していて、麻酔科の先生がどうしても捕まらないんです。
外科の坂木先生に一度事務長につてがないか聞いてみてくれって言われまして。どなたかいらっしゃいませんか?】
電話越しから聞こえてくる緊迫した声音。
「麻酔科……」
浮かんできたのは凛子の顔。
「わかった。
探してみる。
タイムリミットはいつだ?」
【1時間後には始めたいとは言われています。】
「わかった。」
電話を切って、すぐに凛子にかける。
凛子が休みであることを祈りながら……
暫くすると発信音が途切れた。
【は~い、もしもし】
凛子のゆるい返事。
「ああ、凛子、今暇か?」
【なによ、煌人兄さん唐突に。
暇じゃないわよ! 今から寝るところよ。】
「寝るって?
今家か?」
【そうよ。
緊急オペが終わって今帰ってきたとこよ。】
「疲れてるとこ申し訳ないが、今からこっちで緊急オペに入ってくれないか?」
【はあ!?】
凛子の苛立った声音。
「麻酔科医が捕まらないらしい。
1時間後にはオペを開始したいと俺の携帯に連絡が入った。
凛子が無理なら聖時に頼む。」
【馬鹿ね!
医者なら誰でもいいわけじゃないのよ!】
「……なら、来てくれるのか?」
【……ッ!!
行くわよ!
オペ室に栄養ドリンク持ってきてよね!】
凛子はそう言葉を吐き捨てると電話を切った。
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