強大な岩と自分勝手な月

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 凛子は本当に気が強い。  それでも……兄弟の中で一番星野のことを思っているかもしれない。  医者になって外科医にならなかったのは、聖時と俺のことを考えてのことだと思う。  外科医になった聖時をサポートするため。  医者にならなかった俺に気を遣わせないため。  昔から俺たち3人の調和を保っていたのは凛子だった。    凛子はあの電話から40分程度でオペ室に現れた。  長くてしなやかな黒髪をなびかせて、颯爽と現れた凛子は黒蝶のようだ。  ふわふわと患者の元へ行くと、満面の笑みを浮かべた。 「麻酔科医の星野です。  今から手術の準備を始めていきますね。」  初めて自分の病院のオペ室で麻酔をかけるだろうに、それほど困った様子もなく淡々と準備を始めていく。  あの電話から1時間後に無事に手術は始まった。  それを確認して「ふ~」と大きく息が漏れた。  オペ室を後にしながら、看護師が声をかけてくる。 「星野事務長助かりました!  有難うございました。」  俺に向かって頭を下げてきた。  多分、俺に電話をかけてきた人物。 「いや、俺は頼んだだけで何もしていない。  凛子先生にお礼を言ってやってくれ。」 「……あの先生は?  星野事務長の関係者ですか?」 「ああ、俺の妹だ。  それじゃあ、後は頼んだ。」 「はい、お疲れ様です。」    驚いた表情のその看護師を残してオペ室を後にした。  そしてまた……俺の携帯が鳴る。  その表示は"自宅"からだった。  プライベート用の携帯を耳に押し当てると、【あの、煌人さん。お仕事中に申し訳ありません】その声の持ち主は、節子さんだった。  
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