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「ああ、節子さん。
何かあった?」
節子さんが仕事とわかっていて、俺に電話をかけてくるなんて滅多にない。
だから、きっと急用。
【あの…今、悠子さんがいらして。】
「え!?悠子さん!?」
休日に悠子さんが来るなんて今までにないことで驚いてしまった。
【はい。
煌人さんがお仕事なら帰りますと言われてもう玄関に向かわれているんですけど。
とても思いつめた顔をしていらっしゃるから、節子気になりまして……。】
節子さんの言葉に苛立ちが募る。
また、聖時か。
「こっちの方も今ちょうど落ち着いたから、一度家に帰る。
悠子さんに少し待ってもらうように伝えてくれ。」
【わかりました】
俺の言葉を聞くと、電話の向こうから【悠子さーん!】と叫ぶ節子さんの声がして、電話がガチャンと切れた。
携帯を胸のポケットに入れて俺も小走りで家に急いだ。
自宅に戻ると、親父の車がなくなっていた。
そう言えば、昨夜今日はおふくろと出かけると言っていたな。
親父はまだ院長だから、週に2回は当直に入っている。
もう歳だから、夜間の緊急オペはキツイみたいで、時折聖時のことを口にする。
聖時が星野へ戻ってきたら、週1回の外来だけにすると決めているみたいだった。
星野で働いてくれている医師や看護師たちも、今日みたいな医師の不足やアクシデントは院長の親父ではなくて、ファーストコールは俺にかかってくる。
俺の方が対応が早いことをきっとわかっている。
さっきの報告に親父に電話をかける。
俺の電話に出たのはおふくろだった。
麻酔科医の応援要請で凛子を呼んだことを告げると、おふくろは【晩御飯は凛子ちゃんも一緒ね。】と弾んだ声音で答えた。
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