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ナビが目的地まで案内してくれた。
聖時のマンションへ出向いたことはないが、ナビがここだと言うからここなんだろう。
聖時が居るか居ないか知らない。
苛立っていたし連絡もせぬままここまで来た。
マンションの駐車場に入ると見覚えのある黒のレンジローバーが視界に飛び込んできた。
運転席に人の気配を感じて一瞬視線を向ける。
運よく聖時がそこにいた。
駐車場内に視線を巡らせると来客用と記してある駐車場が目に入ってそこにレクサスを駐めた。
車に乗り込んでいるからには今からどこかに出かけるのかもしれない。
5分でいい。
聖時と話がしたい。
どうしても、今!
サッと車から降りて、聖時の元へ向かった。
俺が運転席の傍まで行くと聖時は窓を開けた。
相変わらず涼しい顔をしていて、それすらも今の俺には腹立たしい。
「久しぶりだな。
こんなとこまで俺に会いに来てくれたのか?」
聖時から声をかけてくれたが、そんなこと無視だ。
「意外と遠いな。
今からどこかに行くのか?」
「特に行き先に予定はねえな。」
その言葉にホッと安堵した。
これで女のところにでも行くとか言われたらすぐにでもぶん殴ってやるところだ。
「それなら、俺に付き合え。」
「どこに行くんだよ?」
面倒くさそうにそう返してきた。
「どこでもいい。
コーヒーが美味けりゃな。」
コーヒーの美味い店だったら、俺の苛立ちも少しは収まるかもしれない。
「乗れよ。」
聖時は左手の親指を助手席に向けた。
助手席に回って扉を開いて、少し車高の高い聖時の車に乗り込んだ。
俺が座ると聖時はギアを動かして、ゆっくりとレンジローバーを発進させた。
聖時はどこへ向かっているのか、喋ることもせず、ただひたすらに車のハンドルを握っていた。
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