強大な岩と自分勝手な月

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 だけど。  俺には出来ないから。  したくても、出来ない。  弟に頼むことしか出来ない。  ……本当に情けない。  この結婚は  医者でなければ……  ダメなのか?  ふと頭によぎる疑問。  真剣な表情で聖時を見た。 「悠子さんを悲しませることはするな。」  聖時は眉間にシワを寄せた。 「兄貴にだけは言われたくねえよ。」  ……そうだろうな。 「話はそれだけかよ?」    聖時の苛立った声音。 「あともうひとつ。」  聖時が苛ついていく程に俺は冷静を取り戻していく。 「年が明けたらパーティを開くそうだ。」 「は?パーティ?誰が?何のだよ?」 「轟知事が聖時を息子に迎えることを世間に公表するパーティだ。」  聖時の表情が固まる。 「轟知事が公表すれば星野病院もお前も一気に有名になる。  お前の結婚相手はそれだけ強大な力を持っていることを忘れるな。」  聖時に忠告しながら……  それまでの間に医者の聖時ではなく、事務長の俺でもいいと知事が許してくれるなら。  総合病院になれば、俺はその病院の事務局長に就任するはずだ。  他の人事を知事が仰げば話は別だが。    少しだけ考え耽(フケ)っていると、聖時の探るような質問。 「兄貴は……  星野が総合病院になることに賛成してんのか……?」  俺と聖時がいずれは総合病院を背負って立つはずなのに、二人でお互いの意志を確認したことなんて今の今まで一度もなかった。  ちゃんと話をしないといけないと思っていた。  きっと、いい機会だ。 「賛成か反対かと問われると……  正直賛成はしていない。」 「……え?」  聖時の驚いた表情。
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