強大な岩と自分勝手な月

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「今の星野の経営が苦しいわけでもない。  ただ知事の政策に巻き込まれたに過ぎない。  それでも、あの地区での病院の施設拡大は地域住民の願いだ。  それに知事が賛同して県がお金を出してくれるなら星野にとっても損な話にはならない。  ……でも。  俺には懸念もある。  総合病院になれば、それだけの医者を集めなければならない。  医者だけじゃない、コメディカルも看護師もだ。  それだけの人間が果たして集まるのか……  それだけの施設を作り上げて、患者が来るのか……  今の安定した星野の経営を捨ててまでこのプロジェクトを遂行する必要があるのか……  人生を賭けた大博打だと思ってる。」  聖時は俺の話を黙って聞いていた。   「正直に言えば……  総合病院にするのは間違っていると思ってる。」  ……親父にすら言ったことのない本音。  それを、聖時に初めて喋る。 「……じゃあ…どうして……」  聖時の問いかけにフッと笑う。 「それが親父の夢だからだ。  俺は親父の背中をずっと見てきた。  いつかは親父と同じ外科医になることを夢見てきた。  そして星野を親父と盛り上げていこうと思ってた。」 「医者に……なりたかったのかよ?」 「昔はな。」  やっぱり。  俺が医者になりたくないから、事務長の道を進んだと思っていたか。
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