強大な岩と自分勝手な月

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 *****  聖時と別れてレクサスに乗り込みすぐに電話をかける。  電話帳に登録してある"指川さん"をタップした。  耳に聞きなれた電子音を聞きながら、しばらくするとその音は途切れた。 【はい、指川です。】  いつもの堅苦しい声音。 「星野です。  急に電話して申し訳ない。  今よろしいですか?」 【ええ、少しなら】  大きく息を吸って吐き出した。 「知事に話があるので、至急時間を作っていただきたい。」 【ご用件は?】 「今回の悠子さんと聖時の婚約の件です。」 【……とりあえず、知事は来週から1週間出張で不在になります。  帰宅後になりますが、よろしいですか?】  ……1週間後……   「わかりました。  戻られたら連絡いただけますか?」 【承知しました。  知事にもそのようにお伝えしておきます。】  指川さんとの電話を切ってもう一度大きく息を吐き出した。  1週間はまどろっこしくてなかなかに長い。  ようやく指川さんから連絡があったのはあれからきっちり1週間後だった。  屋敷に招かれたのは夜。  個人的な用件だったから、工藤には言わずに一人でやってきた。    これから知事と対峙する俺は……  あの人から見てどんな風に映っているんだろうか。  滑稽で惨めだろうか。  それでも……  それを恐れていたら一生手に入らない。  暗闇のいばら道の奥に……  ひっそりと咲いている可憐で高貴な深紅の薔薇。  触れてはいけない。  自分のものにしてはいけない……  禁断の深紅の薔薇。  俺は、それを……  どうしても手に入れたくて  子どもみたいにもがき続ける。  
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