あてがわれた婚約者

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 エントランスホールにあるソファに座ってしばらく待っていると、引きつった表情の女性が現れた。  きっとあの人……  それでも、想像していたイメージとは全く違って。  パッと見て思った印象は、幸の薄そうな方。でしたの。  肩までのふんわりした髪で丸い輪郭。  二重で綺麗なお顔つくりですけど、表情に柔らかみがなくて。  わたくしより小柄でとてもほっそりとした体形。  女性としての象徴はなさそうに見えて。  ……着やせするタイプの方かもしれませんけど。  わたくしと視線が絡むと足が止まった。  わたくしは構わず立ち上がって、その方の所までヒールを鳴らした。 「わたくし轟悠子ですわ。  聖時さんのフィアンセですの。」  わたくしの言葉にドンドン表情が蒼白になっていく。 「あなたは?」  見るからにひるみましたの。  その方はわたくしから視線を逸らして俯いた。 「……あの……」  なんて答えるのか少し待ちましたのよ。  ですけど、その方はそれ以上何も言われませんでしたの。  それって……  どうゆうこと?  フィアンセの前で恋人と言うのが恥ずかしいってこと?  わたくしと話をすること自体が馬鹿らしいってこと?  それとも……恋人ではないってこと?  何も答えないから何もわからなくて。 「よろしいですわ。  ですけど、フィアンセとしてこれだけは言わせていただきますわ。」  ずっと俯いているその方にわたくしは自分の立場としての言葉を投げた。
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