あてがわれた婚約者

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「わたくしは何があっても聖時さんと結婚します。  これは決められたことですの。  聖時さんはわたくしと結婚して総合病院の院長になられるのですわ。  これからお医者様として向上される聖時さんのお力になりたいと思っていますの。  結婚はまだ先ですわ。  それまでの間に聖時さんの為にあなたはどうなさるべきか考えていただけますこと。」  わたくしが喋っている間、この方は一度もわたくしと視線を合わせることはなかった。  聖時さんに会えないなら、ここに居る意味はこれ以上ない。  一方的に言葉を投げてわたくしはこのマンションのエントランスホールを後にした。  外へ出ると伊部はベンツの横に佇んでわたくしを待っていた。  絶妙のタイミングで後部座席の扉を伊部が開ける。  わたくしはそのままベンツに乗り込んでシートに深くもたれた。  聖時さんに会うこともなく  恋人かもしれない方に会って  どうしようもなく深く胸が痛んで……  妙に疲れた一日だった。  わたくしが聖時さんにお会いできたのは……  それから3週間も経った後でしたの。
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