あてがわれた婚約者

22/24
前へ
/441ページ
次へ
「……そう……ですのね。」  自分でもわかるほど一気に気分が落ち込む。 【まだ後2時間くらいは帰れないかもしれません。  お待たせしてしまうので、また次回にしましょうか。】 「え!?」  そんなこと言われるなんて思ってもいなくて。 「嫌ですわ!」  電話の向こうの聖時さんにそう叫んでいた。  だって  だって……  ここまで来るのに2か月は待ちましたのよ。  聖時さんはわたくしを好きなわけじゃない。  そんな感情を抱くほどお互いを知りもしない。  あの幸の薄そうな恋人の方にフィアンセのわたくしは勝てもしない。  ですけど  これから先、結婚してしまったらずっと一緒なんですのよ。  少しでも聖時さんのことを知って  少しでも聖時さんの為に何かをしたい。  それが、わたくしに課せられた使命。  それがわたくしのすべてになるのですから。 「2時間でも3時間でも待ちますわ。  だから、今日必ず悠子と会ってくださいませ。」  そのままわたくしと会わずにマンションに戻って、あの方を抱くのかもしれない。    そんな風に思ってしまう自分が嫌だった。  携帯越しに溜息を吐きだしたのがわかる。  聖時さんの次の言葉が怖くて肩が震えた。 【……わかりました。  仕事が終わったら電話します。】  そう言って電話は切れた。  聖時さんの言葉にホッと安堵して肩の力が抜けた。  それから2時間後。  わたくしはようやく聖時さんとお会いできましたの。
/441ページ

最初のコメントを投稿しよう!

959人が本棚に入れています
本棚に追加