まぶしい太陽

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 わたくしの心は急にソワソワと落ち着かなくなって……。 「お客さんが来てるならリビングには行かない方がいいかな?」  はつらつとした耳に心地いい声音。  ドキンドキン……。  自分でもびっくりするほど心臓の鼓動が身体中に響いて。 「ちょっと疲れちゃってさ。  節子さん、部屋にコーヒーお願い出来るかな。」  廊下での話し声がリビングにまで届いて。    ……この声……間違いありませんわ 「はい、かしこまりました。」 「悪いね、頼むよ。」  リビングの開いたままの扉から一瞬見えた横顔。  きらとさんはリビングに入ってくることもなくご自分のお部屋へ行かれたのですわ。  その事実に驚くほど落胆している自分がいて。 「あら、きらくんリビングに入ってくればよかったのに。」  お義母様はそう呟くように言った。 「今日の客人が悠子さんだってことを煌人は知っているのかね?」  お義父様の言葉にお義母様は視線を向けた。 「あら、あたながきらくんに言ってないのなら知らないのじゃないの?  あなたが伝えていると思っていたから私からは言ってないわよ。」 「……そうか。  聖時は煌人には言ってなかったのか……。」  ばつが悪そうにお義父様はわたくしに視線を向けた。 「コミュニケーションエラーだね。  すまないねえ、悠子さん。  節子さんにコーヒーを持って行ってもらったときに煌人に伝えてもらうよ。」 「いえ、そんなこと気にしていませんわ。」  落胆した心を見透かされないように、静かにそう言葉にして、お紅茶を口に含む。  ハーブティの香りがわたくしの落ち着かない心を少し鎮めてくれる。
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