まぶしい太陽

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 きらとさんのものに違いない足音に気づいてしまったわたくしは……  視線すらどこに向けていることが正解なのかわからなくて……  傍から見れば滑稽なほど視線を彷徨わせていたに違いない。  ドクンドクンと速く強くなる鼓動。  リビングに入ってくる気配を感じて。 「ああ、煌人。」  先に声を掛けたのはお義父様だった。 「疲れているところ悪いね。」 「いや、それはいいよ。」  さっきよりも近くに感じる声。 「聖時の婚約者が来るなら言ってくれてたら手土産のひとつも買ってきたのに。」  その言葉にゆっくりと視線を向けた。 「てっきり聖時から聞いているものだと思っていてね。」  きらとさんと……  視線が絡んだ。  ドクンッ!!  大きく心臓が跳ねる。  はっきりとお顔を拝見いたしました。  太陽もないのに眩しく感じて、わたくしは目を細めた。  一瞬驚いた表情を見せて、だけどそれはすぐに戻った。  きらとさんは本当に  眩しいほどの笑顔をわたくしに向けてくださいましたの。  聖時さんとはまた違う甘いマスクの持ち主で。  日に当たればきれいに輝きそうなサラサラの長めの前髪。  整ったフェイスライン。  キリリとした眉。  すっと通った鼻筋。  笑うと垂れる瞳。  少し厚めの下唇。  聖時さんと変わらないスラっとした長身。 「初めまして。  聖時の兄の煌人です。」  きらとさんはわたくしたちの傍までくるとそう挨拶してくださいました。  ドキドキが収まらなくて。  お顔を見て……  余計に強くなっていく。 「と、轟悠子ですわ」  自分の名前を言葉にするので精一杯。  
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