まぶしい太陽

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「まあ、そうね。  きらくんに帰りは送ってもらったらいいわ。」 「え?あの……」  お義母様もきらとさんの言葉に便乗するような形で提案されて。 「……帰り?  行きはどうやって来られたのですか?」 「あ、あの……。執事の伊部に。  帰りも伊部に頼みまわす。  そのつもりでしたし。  きらとさんお疲れなのに申し訳ないですもの。」 「申し訳ないのはこちらの方だ。  本当なら聖時がきちんとするべきことですから。  お帰りはきっちり送り届けさせていただきますよ。」  そしてきらとさんはわたくしからテーブルへ視線を移した。 「もしかしてそれこの前の?」 「そうよ。  とっても美味しいわ。  お父さんなんてコーヒーおかわりしたくらいよ。」 「煌人も一緒にどうだね。」 「じゃあ、そうさせてもらうよ。」  きらとさんはお義父様の言葉に頷くとわたくしの隣に自然に腰を下ろした。  はああ……  ど、ど、どうしたらよろしいのっ!?  こ、こんなに近くに!!  緊張で……  手が震えないようにグッと握りしめた。 「煌人さん、新しいコーヒーです。」  節子さんはきらとさんのテーブルの前にコーヒーカップを静かに置いた。 「ああ、有難う。」  きらとさんは手を伸ばしてミルクを手にした。  それを黒い液体に垂らす。  きらとさんはソーサーに置かれているスプーンでミルクを軽くかきまぜた。    暗闇は白に溶かされて……  色を変える。  その光景をただ静かに見ていた。  きらとさんは砂糖は入れないみたいで、ミルクだけを入れた。
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