まぶしい太陽

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「……ミルク……だけ……ですの?」  わたくしの呟くような言葉にきらとさんは視線を向けた。 「ああ、子どもっぽいでしょう。」  そう言って小さく笑う。 「いえ、そんなつもりでは……」 「聖時は普通にブラックで飲むんですけどね。  俺はミルクを入れる方が疲れが取れる気がするので。  味がマイルドになるでしょう。」  そう答えをくれて、またにっこりと微笑んだ。  その笑顔に……  何故だかホッと安堵して 「ふふふ」  笑いが零れた。 「お義母様もそうでしょう。」  私の言葉に一瞬その場が時を止める。  ……変なこと……言いました?  わたくしの中に緊張が走る。 「あはは」 「あら。」  きらとさんとお義母様の声が重なる。 「よく見てるわね、悠子さん。」  お義母様もきらとさんと同じ笑顔をくれる。 「そうですよ。  母がしていたから、真似したんです。  あはは。」 「煌人は性格も母親譲りだからねえ。」  きらとさんの後にお義父様もそう付け足した。 「そんなことないわ。  この子の行動力の凄さはあなたに似たのよ。」  お義母様はお義父様を立てたに違いない。  きらとさんはわたくしに視線を向けた。  そして茶目っ気たっぷりに笑う。 「そうなんです。  俺両親のいいとこ取りしちゃったんで。」  ドクンッ!!  ドクンドクン……。  この心臓の鼓動をどうやっておさめればいいのか。 「あはは。  でも、聖時のお陰なんですよ。  俺がこんなに自由に好きなこと出来ているのは。  本当なら……  医者としてこの病院を継ぐのは……」  そう言いながらきらとさんはコーヒーカップに手を伸ばした。 「俺だったはずだから。」  そして、カップを口に運ぶ。  その流れるような映像を  瞬きもせずに見つめていた。
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