まぶしい太陽

10/28
前へ
/441ページ
次へ
 それって……  イコール  本当はわたくしのフィアンセになる方はきらとさんだった。  ってことですの?  聖時さんには感じなかった胸のときめきを、きらとさんに感じていることだけは充分に理解していた。  このときめきが……  恋心ではないことだけを  切に願う。 「………………」  言葉にならなくて……。  きらとさんの今の言葉になんて返事をすればいいのか正直わからなくて。 「聖時はまだまだ医者になりたての若輩だから……  何かと忙しいのかもしれません。  でも、今日のことは婚約者としてはあまりにもひどすぎる。  俺からきちんと注意しておきますから。」  わたくしの顔は……  引きつっているかもしれません。  だって……  きらとさんの表情が少し困っているから 「……聖時のこと嫌いにならないでやってください。」  チクチクと痛む胸の奥。  それに気づかないふりをして、わたくしは視線を逸らした。 「……嫌いになんて……」  そもそも好きも嫌いも……  そんな感情すらまだ生まれていない。 「なっていませんわ……。」  きらとさんはわたくしの答えに小さく息を吐きだした。 「よかった。」  そして、そう小さな声音で言葉にした。  なんでこんなにも胸が苦しくなるのか……。  わたくしはゆっくり顔を上げてきらとさんに視線を向けた。  またドキッと心臓が跳ねる。  眩しいほどの笑顔に……  ……触れてみたくなる。  この太陽のように眩しい方が……  わたくしを暗闇から連れ出してくれるんじゃないか。
/441ページ

最初のコメントを投稿しよう!

958人が本棚に入れています
本棚に追加