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「27ですわ。」
……そう、もう27歳。
女としてのいい時期はとっくに過ぎ去った。
悪く言えば、売れ残り。
結婚したいと思った殿方は一人いましたの。
……21の時。
真っすぐにわたくしのことを愛してくださいましたわ。
二つ年上の普通のサラリーマンの方でした。
もう6年も前。
6年前に……わたくしは光を失いましたの。
自分のための未来なんてどこにもない。
付き合う人すら自分で決められない。
そんな権利、わたくしにはありませんの。
だって……
政界人、轟大治郎の娘なのですから。
お父様の示す道のみがわたくしの進む道。
ですから、光なんていらないのです。
暗闇で、何も見えなくても……
どこに進んでいるのかも
わたくしには知る必要なんてないのですから。
「うむ。」
お父様は身体を起こした。
「悠子の嫁ぎ先を決めたよ。」
ドクンッ!
とうとうきたのですわ。
お父様の言葉に目を閉じて小さく息を吐きだした。
そして、ゆっくりと瞳を開いてお父様を見据えた。
「悠子はどこへ嫁ぎますの?」
「星野外科病院だ。」
「……病院?」
そう。
この結婚は人と人じゃありませんの。
わたくしの心なんて……
必要ない。
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