まぶしい太陽

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「今はこのプロジェクトのことで結婚とかそんなこと考えてる余裕ないよ。」  お義母様を諫めるように、きらとさんはそう言葉にすると手にしたクッキーを口に入れた。 「ん!?  美味いな!」  きらとさんは上機嫌で言った。 「きらくん、誤魔化さないの。」 「まあまあ、今日はその話は……。  俺も出来る限り善処させていただきますよ。」  きらとさんはそのままコーヒーを一気にぐびっと口に含んで喉を鳴らす。 「さあ、悠子さん。  行きましょうか。」  きらとさんはスッと立ち上がる。 「え!……ええ……」  促されるままにソファから立ち上がる。 「ここはリビングになりますから。  玄関の奥に応接間があるんです。」  そう言いながらきらとさんはリビングを後にする。  そのきらとさんの後姿を追いかけた。  きらとさんに案内されて応接間、お義父様とお義母様のお部屋、そしてお義父様の書斎。    扉の前までで中までは拝見していませんけど。  それと節子さんの部屋。  お風呂とトイレ。  節子さんのお陰かどこも綺麗だった。  所々に季節を感じる置物なんかが置いてあって。  もう10月ですから、仕様は"秋"ですわ。  松ぼっくりやどんぐりなんかが邪魔にならないようにそっと飾られていて。  そんな季節を感じられる優しさにホッとしてしまう。 「1階はこんなもんです。  それじゃあ、2階に行きましょうか。」  きらとさんは変わらない煌めくほどの笑顔をわたくしに向けてくれる。
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