まぶしい太陽

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「悠子さんのご自宅に比べれば小さい家だと思いますけど。  住めばそれほど悪くないですよ。」  きらとさんはわたくしに視線を向けて小さく笑いながら2階へ続く階段をあがる。    確かに。  屋敷よりは全然狭い。  それでも、この家には暖かさが溢れていて。  この家ならわたくしもそれほど辛い思いをしなくてもすむかもしれない。 「ええ、楽しみですわ。」  わたくしも笑顔で返した。  きらとさんは2階にある5部屋の案内をしてくれる。  聖時さんの部屋を開けると「どうぞ、ここが聖時の部屋です。」そう言って中に入るように促した。 「……よろしいの?」  きらとさんの顔を見上げた。 「ええ、もちろん。」  8畳くらいの部屋でとても綺麗だった。  当たり前だけど、ここで生活している様子は見られなくて。  ベッドと大きい本棚にあふれるほどの書物。  ソファとテーブル。  そして、机。  わたくしは聖時さんの部屋をぐるりと一周見渡した。 「……さっきは」  きらとさんはわたくしにそう言葉をかけた。  その言葉にゆっくりときらとさんに視線を向けた。 「突然母があんなことを言い出して申し訳ありませんでした。」 「……え?」  何のことを言われているのかわからなくて。 「俺の結婚がどうのって話です。」 「ああ。……いえ……」  きらとさんはまた小さく笑う。 「最近は俺の顔を見ると結婚、結婚って煩くて。  話を終わらせるのに悠子さんをダシに使ってしまいました。」 「……そんなこと……気にしてませんわ。」  きらとさんはまた眩しいほどの笑顔をくれる。 「ならよかった。」  そう答えるときらとさんは聖時さんの部屋のソファに腰を下ろした。 「この部屋は医学部に合格するまで使っていた部屋なので。  もう10年以上空き部屋同然なんですけどね。  ふらっと帰ってくることがあるので、そのまま置いてあるんですよ。」
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