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慌てて立ち上がる悠子さん。
暗闇に浮かび上がる細くて長い白い足。
悠子さんは立ち上がると胸の前で両手をクロスさせて腕をさする。
寒さで身が縮んでしまう。
「……外は……もっと寒いですよ。」
ベッドから抜け出してすでに部屋の中はひんやりとしている。
上着を羽織っても寒い。
「まあ、丁度いい。
あなたと手を繋ぐ口実になる。」
「……え……?」
悠子さんは俺を見上げた。
微笑んだまま悠子さんの手を握りしめる。
悠子さんもその手を遠慮気味に握り返してきた。
その手を引き寄せて、寝室を後にする。
リビングに寄って、電気を付ける。
「エアコン入れておきましょう。
帰ってきたときに暖かい方がいい。
悠子さんコートは?」
電気が付いて部屋に明かりがともる。
悠子さんの姿が色を取り戻して……
綺麗で高貴な紅。
深紅の薔薇。
昨夜より血色もよくて、その表情にホッと安堵する。
「……煌人さんのスーツが皺になってしまいましたわね。」
エアコンのリモコンを操作していると、悠子さんは俺のスーツを見ながらそう言った。
「ククク。」
この人は……先に人に気を遣う。
悠子さんのVネックのAラインにフレアなワンピース。
黒に大柄の絵がワンピース全体に散りばめられていて。
絞められたウエストで悠子さんの細い腰が際立つ。
「悠子さんのワンピースも……皺になってしまいましたね。」
だが。
さすがにそれを脱がす勇気なんてなかったな。
俺の言葉に悠子さんは自分のワンピースに視線を向ける。
またもや顔を赤に染めて「あっ!これで外に出るのは煌人さんがお恥ずかしいですわね。」って、そう言うんだ!
「髪も……顔も……そのままで……」
そう言いながら両手で顔を覆って、髪にも触れる。
真っ赤な顔して焦っているお嬢様は本当にツボだ。
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