太陽の下で

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「あはははは!  あなたはどんな姿でも綺麗ですよ。」  ソファの上に置いてある淡いピンクのコートを手にした。 「ワンピースの皺は気にしなくてもコートで隠れてしまいますよ。  よければ浴室でチェックしてきますか?」  俺の提案に悠子さんは小さく頷いて、ソファに置いていたバッグを手にリビングを後にした。    暫くするとゆっくりとリビングの扉が開く。     「あの……たいして何も変わりませんでしたわ。」  そう言ったけれど、さっきよりもグッと綺麗になった。  下ろしていた髪は緩くまとめ上げられていて、唇にも綺麗な赤い口紅がひかれていた。 「そんなことはない。  今からデートにでも行けそうです。」  そう言うと、悠子さんはまた静かに顔を赤に染める。 「ククククク。」  ヤバイ!  マジでツボ過ぎる。  こんなに可愛らしいなんて反則でしょ! 「行きましょうか。」  悠子さんの傍に近づくとさっきまでそれほど感じなかったローズの甘い香りが鼻腔をくすぐる。  それをもっと感じたくて悠子さんの肩を抱いた。  俺の行動に驚いたようで悠子さんは俺に視線を向ける。  その上目遣いにまたドキッとして……  何度も悠子さんの女の部分を感じて。  キスしたくなる感情を抑えた。  せっかく俺の為に綺麗に口紅をひいてくれたのに……  俺がそれを絡めとってしまう。  玄関を出ると想像以上に寒さがキツイ。  さすがに身体がブルブルっと震えた。 「煌人さんはコートはありませんの?」 「車にありますよ。  昨日、慌てて部屋に行ったもので、車に置いてきてしまいました。」  俺の言葉に悠子さんは視線を逸らした。 「……昨日……」  外はまだ暗くて、マンションの廊下の灯りが足元を照らす。  吐いた息が白く濁っては消える。
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