太陽の下で

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 悠子さんはヨーグルトや野菜のトマトなんてものを手にして俺が持つカゴに入れる。 「……トマト?」 「ええ。  せっかくですから、何か作りますわ。」  まさかの言葉に俺の動きが止まる。 「……え?  わざわざ作らなくても大丈夫ですよ。  それに、そんなに材料もないでしょう。」  単純に驚いて。  そんなつもりでコンビニに来たわけでもなかったし。 「あっ、迷惑ですわよね。」  悠子さんはカゴに入れたトマトを手にして戻そうとする。 「迷惑なわけじゃ……  ただ、驚いて……」  俺の言葉に悠子さんは安堵の表情を見せた。 「あの……煌人さんのお時間があるのでしたら……  大したものは出来ませんけど、30分くらいで作れますから。」  悠子さんの気持ちが単純に嬉しくて……  今日もまだ星野にはブランがいる。  朝一のオペは8時からだろう。  その時間には星野にいるのがベストだ。  だから、7時には遅くても聖時のマンションを出なければ間に合わない。  実際問題、俺は身内だから何時に出勤しても何時に退勤しても給料は変わらない。  俺が出社する意味は星野の経営を安定させることだから。  俺が出勤して事務長室にいることが重要。  今日は……  ブランのオペ以外に朝から何かあっただろうか。  最近は俺のスケジュールを工藤に管理させているから、まったく自分の予定がわからない。  でも、コンビニでこんなに楽しそうな悠子さんを見て、時間がないとは正直言いにくい。 「あまりゆっくりしている時間はないから……  何か一品だけ作ってもらおうかな。」  俺の言葉にパアっと表情を明るくした。 「それならスープにしますわ。」
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