太陽の下で

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 悠子さんはヨーグルトを戻して、追加でコンソメと塩コショウをカゴに入れた。  あと、クロワッサンを選ぶ。  ホットのコーヒーとミルクティをカゴに入れて、最後に歯ブラシを入れた。  勿論、二人分。  会計をすませて、また車に乗り込んだ。 「ふふふ」  悠子さんは柔らかく何度も微笑む。  その表情を見て、俺も自然と顔が綻んだ。  聖時の部屋に着いて悠子さんはすぐにキッチンに向かった。  何だか手馴れているように見えて、俺の心が少しズキンと痛む。  リビングはエアコンのお陰でコートが要らないくらい暖かかった。  悠子さんはキッチンで手を洗いながら俺に視線を向けた。 「よかったら、煌人さんシャワーでも浴びてきてくださいね。  きっと夜入っていらっしゃらないでしょう。」 「……それじゃあ。」  確かに。  手もちぶさた。  ここで何度か聖時の為に食事を作っていたのかもしれないと思いながら待っているのも嫌だった。  悠子さんの楽しそうな姿を横目にリビングを後にして浴室へ向かう。   「……ところで、タオルとか……あんのかよ?」  脱衣所をぐるりと見渡して、タオルを見つける。 「あ、あった。」  浴室も覗いて、シャンプーなんかを確かめる。 「……一応揃ってるな。」  服を脱ぎ去って浴室へ入る。  シャワーを浴びながら、昨日からの汗を流す。  昨日……  ここへ来てから今まで。  ようやく手にした大切な人。  悠子さんの柔らかく微笑んだ笑顔を見て……  今日までもがいてきた意味があったとホッと胸を撫でおろす。  俺と悠子さんはここから……  ここからだ。  今始まったばかり。  ようやくスタート地点に立ったに過ぎない。 「シャア!!」  シャワーを頭から浴びながら気合を入れる。  何がなんでも成し遂げて見せる。  
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