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シャワーから上がって、髪をタオルでガシガシと拭く。
もう一度、皺になったスーツに袖を通してリビングに戻る。
リビング内にコンソメのいい匂いが充満していて一気に腹が減ってくる。
「あっ!煌人さん、丁度良かったですわ。
もう出来ますわ。」
悠子さんはずっと上機嫌で、フフフ~ンなんて鼻歌交じりだ。
リビングのソファの前のテーブルにスープが並ぶ。
「そこに座ってくださいね。」
「いえ、何か手伝いますよ。」
「よろしいのですわ。
悠子が煌人さんの為に全部したいだけですから。」
その言葉にフッと笑いが零れて、悠子さんに言われるがまま傍のソファに腰を下ろした。
お皿にのったクロワッサン。
「これしかありませんけど、どうぞお食べくださいね。」
最後に俺の前にコーヒーを悠子さんの前にはミルクティの入ったマグカップを置いた。
悠子さんが座るのを待って二人で手をあわせた。
「いただきます。」
悠子さんと視線がぶつかる。
ふふふ、と柔らかく笑う悠子さんがとにかく可愛らしい。
それに心が癒される。
スープはトマトスープだった。
「美味しそうだな。」
俺の手はスープに伸びる。
カップを手にしてスープを口に含む。
優しいコンソメの味が口内に広がってスープの温かさが身体を温める。
丸っと入っているトマトも崩して口に運ぶ。
トマトの甘酸っぱさがたまらない。
「こんなところで朝から美味しいトマトスープが飲めるなんて幸せだな。」
俺が笑うと悠子さんは「ふふふ」と笑う。
「煌人さんが朝から悠子の作ったスープを飲んでくださるなんて夢みたいですわ。」
そして、少し困ったような表情を見せる。
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