まぶしい太陽

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 きらとさんは……  自然に道を示す。  夕食に誘われて  それまでの間の散歩  スマートに行動して、すぐに実行に移す。  それにこんなにイケメンで……。  いえ、イケメンなら聖時さんだってそうですわ。  小さく頭を横に振る。  フィアンセの聖時さんとお兄様のきらとさんを比べるなんて、とんでもないことですわ。  吹き抜けの光で溢れる玄関でヒールに履き替える。  この玄関……。  とても気持ちいいですわ。 「悠子さんのヒールを見て、凛子が帰ってきてるのかと思ったんですよ。」  きらとさんはすでに革靴を履いて、わたくしのことを待ちながらそう言葉を投げた。 「え……?  りんこ?」 「ええ、妹の凛子です。」 「……妹……」  そう言えば、伊部がお嬢様もいらっしゃいます。って言っていたわね。 「そしたら、節子さんがお客様です。って言うから。  こんなに女性らしいヒールを履くお客さんって誰なんだ?って思ってたんです。  若い女性のお客さん。……親父の?おふくろの?って……。  若干頭の中がパニックで。」  きらとさんは帰宅したときのことを思い出したのか笑いを零した。 「親父が浮気でもしていて、それがおふくろにバレたんじゃないかなんて……。  悶々と勝手に想像を膨らませて。  ……だから、リビングには視線を向けずに逃げるように部屋に行ったんです。」  あの時のきらとさんの漏れ聞こえてきた言葉や態度を思い出して。  わたくしも一緒に笑いを零す。 「あんな数分の間にそんなこと考えていたんですの?  ふふふ。」  そんなきらとさんを"かわいい"と思ってしまう。 「内心ヒヤヒヤもんでしたよ。」  ヒールを履き終わると同時にきらとさんは玄関の扉を開けた。  扉を開けただけなのに……  きらとさんが眩しく見えて。
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