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「あなたでよかった。」
ドクンッ!!
心臓がキュンと跳ねる。
きらとさんのはつらつとした心地のよい声音が胸の奥に響いて。
胸のドキドキが強さを増していく。
その言葉にたいした意味なんてないのですわ。
お義父様の不倫相手より、聖時さんのフィアンセのわたくしの来客の方が何千倍もいい。
それだけの理由。
なのに……
どうしてこんなに胸の奥が苦しくなるの?
わたくしは思わず俯いてしまった。
「……そりゃあ……お義父様の不倫相手よりは……いいですわよね……」
「ええ、勿論です。
悠子さんで安心しました。」
それ以外の理由があるわけもなく。
あっていいわけもない。
わかっているのに……
わたくしはゆっくりと視線をきらとさんに向けた。
────ああ……眩しい。
きらとさんの極上の笑顔。
キラキラと煌めいて……
「行きましょう。」
小さく頷いて玄関を後にした。
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