まぶしい太陽

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 微妙な距離を取って歩くきらとさん。  隣に居るのにとても遠くて。  きらとさんのお顔を拝見しようと思えば、かなり視線を上げなければいけない。  ……それは聖時さんも一緒なんでしょうけど。  聖時さんと唯一出掛けた夕食。  並んで歩くほどの距離も一緒に歩いていない。  だから……。  横顔を見上げたこともない。  もう夕方だから、日が傾いていて。  夕日に照らされて、きらとさんのサラサラの髪が煌めく。 「……"きらと"って……  どう書くんですの?」  珍しい名前。  きらとさんは隣のわたくしに視線を落とした。 「あはは。  煌めくに人ですよ。」  煌めく……人。  そのまま。  名前の通りの方ですわね。 「中高生の頃はこの名前すっごく嫌いだったんです。」  煌人さんは少し唇を尖らせた。 「聖時の漢字も珍しいけど、聖時はまだ普通にある名前でしょう。  煌人なんて……。  俺の時代なんて、そんなにまだキラキラネームなんてない頃ですからね。」 「今どきのキラキラネームじゃなくて、本当にキラキラしたお名前ですわ。」 「あはは。」  煌人さんは大きく声に出して笑う。 「本当に!  名前自体がキラキラしてるでしょう。」 「ええ。……でも、素敵なお名前ですわ。」  煌人さんは瞳を大きく開いた。  そして……また。  煌めきを零しながら笑うんです。
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