まぶしい太陽

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 煌人さんの心地のいいペースに引っ張られるまま着いて行く。  あひるって……  本当に大きなあひるでしたわ。  黄色いあひるのおもちゃ。  くちばしが赤で、かわいらしいあひる。  みんな携帯やカメラを手に写真撮影を楽しんでいて。  ……携帯……一応持ってはいますけど……。  写真なんて恥ずかしくて。  写真を撮っている人たちをずっと見ていたからか煌人さんは笑いながら言葉をかけた。 「よかったらお撮りしますよ。」  煌人さんは携帯を手にわたくしへ訊ねてきた。 「え……?あの……よろしいの?」  わたくしの遠慮した声音に煌人さんはまた零れ落ちる笑顔をくれる。 「勿論ですよ。」  携帯で写真撮影なんてしたこともないわたくしが初体験。  ドキドキと胸を高鳴らせて、池を背に煌人さんへ向いた。  煌人さんに向けられる携帯にどんな顔をすればよいのかわからなくて。  きっと……。  引きつった顔をしているに違いない。  緊張を纏って出来る限りの笑顔を作る。 「はいチーズ」  煌人さんはシャッターを切り終わったらしく、携帯の画面を覗き込みながらわたくしに近づいてくる。  そして、顔をあげてわたくしと視線を絡める。 「いい感じですよ。」  そう言ってわたくしにその携帯の画面を見せてくれた。  それほど変な顔をしてない自分の写真を確認してホッと胸を撫で下ろした。  変な顔をしている写真を煌人さんに見られることほど恥ずかしいことはありませんもの。  
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