まぶしい太陽

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 突然のことに何が起こったのかわからなくて。 「フリーマーケットで売っていたものだから、悠子さんが持っているような上質なものではないと思いますが、寒い思いをするよりはきっといい。」  煌人さんの優しさと  わたくしへの気遣い  わたくしの身体に煌人さんはふわっとストールをかけてくれた。  その肩にかけられたストールに視線を向ける。  デザインのチョイスもいやらしくなくて。  単色のキャラメルベージュ。  それほど肌触りもゴワゴワとしていなくて。  カシミヤとかではなさそうだけど、煌人さんの気持ちが純粋に嬉しい。 「あの……有難う……」  ストールから煌人さんへ視線を上げる。  手にはまだ温かさの残るミルクティ。  身体には優しさが詰まったストール。  さっきまでの肌寒さと腹立たしさは一瞬でどこかへ行ってしまった。 「いえ、俺が強引に連れ出したから、嫌な思いが残るだけの散歩にはしたくないだけです。」  その言葉に……  ズキンと心が痛む。  煌人さんの優しい笑みから視線を逸らした。 「……そうですわね」  小さな声音でそう答えた。  その後も煌人さんの優しさには変わりがなくて。  完全に太陽が沈んでしまう前にわたくしたちは星野邸に戻った。
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