まぶしい太陽

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 *****  節子さんの作った夕食は轟家のシェフが作るものとまた違って、家庭的で温かいものだった。  轟家では一人で食事をすることが多くて。  だから、家族みんなで食事をするこの感覚がとても新鮮だった。  お義父様は殆ど喋られることはなかったけれど、煌人さんが少しお仕事の話をされて、お義母様も時折わたくしに言葉をくれる。  静かだけど穏やかな夕食はあっという間に終わる。  煌人さんは食後に節子さんが煎れた玉露を飲みながらわたくしに視線を向けた。 「俺は節子さんの作る食事が一番好きなんですけど、悠子さんのお口に合いましたか?」 「ええ。  轟では出ないものばかりで新鮮でとても美味しかったですわ。  これが星野家の味なんですわね。」  純粋に思ったことを口にする。 「聖時が好きなものも節子さんが一番よく知ってますよ。」  煌人さんは煌めきを零しながらそう言った。 「そうね、悠子さん、よかったらいつでもいらしてね。  次は聖時も一緒だといいけど……。  聖時のことなんて関係なくいつでも。」  お義母様も優しい笑顔と優しい言葉をくれる。 「ええ、有難うございます。」  そう答えると「さあ、もうこんな時間だ。悠子さんご自宅までお送りしましょう。」煌人さんのはつらつとした声音がダイニングに響いた。   「ええ、お願いしますわ。」  わたくしがそう答えると煌人さんはサッと椅子から立ち上がる。  リビングの隅にあるハンガーラックからスーツの上着をスマートに取り上げて、それをサッと羽織った。  たった、それだけのこと。
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