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少し驚いて目を見開いてしまった。
「あはは、突然どうしたの?節子さん。」
「いいえ。
突然ではないですよ。
節子はいつも思っております。
ご兄弟の中で、煌人さんが一番ご両親想いです。」
「…………」
突然の誉め言葉に言葉が出ない。
俺はポリポリと頭を掻いた。
「……参ったな……」
「煌人さんが事務長になられてから、旦那様は変わられました。
帰宅した時の旦那様の雰囲気でお酒かコーヒーか……。
ピリピリされているときにはお酒を、落ち着いていらっしゃるときにはコーヒーをお出ししています。
もう3年も前から旦那様には帰宅されてコーヒー以外をお出ししたことはありませんもの。」
そう言って節子さんはほんわりと笑う。
我家の陰の功労者は間違いなく節子さん。
この人が居なかったら星野家は上手く機能しなかったに違いない。
節子さんは、3歳の娘さんと旦那さんを32歳の時に車の事故で亡くしたらしい。
自暴自棄になった節子さんを救ったのが母だったらしく。
丁度、祖母が病気で家のことをしてくれる人がいなくなり、母が仕事を辞めるか、家政婦を雇うかで悩んでいた時期だった。
節子さんが我家へ来たのは俺が12歳の時。
凛子なんてまだ3歳だった。
……だから、節子さんにとって凛子は自分の娘みたいなもんだ。
節子さんが凛子を抱きしめて泣き崩れたことを俺は鮮明に覚えている。
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