事務長と医者

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「……聖時?」  長男の俺じゃなくて……  次男の聖時に話がいくお見合いって……  結婚不適合者の自覚がある俺にその話が来ないのは正直有難い。  それでも……。  次男の聖時じゃなきゃいけないことなら  十中八九星野病院関連。 「星野外科を総合病院にしようと思う。」  その壮大な言葉に息を呑んだ。 「……は?え……?  総合病院って……本気…か……?」  突然話がすりかわって頭の中が若干パニックで。 「ああ。本気だ。  星野外科病院の未来を考えて、この地区にはもっと大きな病院が必要だ。」  ……総合病院……。  俺とは……違うんだな……  俺は、この地区に必要なのは地域密着型の医療だと思っている。  事務長になってから気が付いた。  独居老人の多さ、退院後に帰る場所がない患者。  退院しても継続して医師の介入や看護介入がいる患者。  介護が必要な患者。  そして……。  俺がどうしても増やしたいのは2次救急。  今は1次救急程度のことをしているだけだ。  3次救急が施設的にも医師数的にも無理であることは百も承知。  2次救急の受け入れが出来れば、助けられる患者の数はグッと増えるはず。  本当の目標はここ。  星野外科病院を医療法人にしたい。  ……だけど。  それを実行するのはもはや俺じゃない。  いずれ院長になる……聖時。  俺の夢を聖時に無理やり押し付けるのは……違う。  それなら、俺が医者の道に進めばよかった。ってことになる。  俺が院長になるんだったら、無理やりにでも聖時も凛子も引き込んだけどな。
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