事務長と医者

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「……それとお見合いとどう関係があるんだよ?」  親父の瞳が翳る。 「……それが轟知事からの条件なんだ。」 「……え?」 「星野の院長になる息子はいずれ、その総合病院の院長になる。  その息子と知事の娘さんとの結婚が、今回の総合病院建設への知事が提案した条件だ。」  その驚く条件に……  俺は言葉が出なかった。  半開きの口が……  なんて言葉を吐き出すことが正解なのか  わからなくて困っている。  "星野病院の院長になる息子"  それは……。  本来であるなら長男の俺だったはずだ。  だけど、俺は……  医者じゃない。    相手の顔もわからない。  好きになるかもわからない。  どれだけブサイクでも  どれだけ性格が悪くても…… 「……聖時が結婚したくない。って断ってきたらどうするつもりなんだ。」  この結婚に拒否権が……あるのか……? 「すでにさっき断られたよ。」 「……そうか……」  それでも、聖時には俺すらも知らなかった野心があるかもしれない。  あの時に声を荒げた聖時。  "「俺はこんなちっぽけな病院の院長で終わらない!」"  あの言葉が……  医者として  男としての野心だったとしたら。  ……この理不尽な結婚を受け入れるかもしれない。 「聖時とちゃんと話した方がいい。  総合病院の院長になるのなら、聖時も頷くかもしれない。」  
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