あてがわれた婚約者

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 伊部からお相手の写真を見せられましたの。  立派な台紙を開くと、そこに映っている殿方はとても素敵な方でした。  少し目にかかる前髪と整ったフェイスライン。  切れ長の二重が印象的でスラッとした体形。  お医者さまなんて、デップリとしたいかにも医者みたいな威厳の強い方を想像していたから。  まあ……どんなにわたくしのタイプの方と違っても、この結婚にNOはないのですけど。  写真のこの方はまったく笑顔なんてない、無表情なお顔。  この容姿でお医者さまならさぞおモテになるんじゃないかと今から少しの焦燥感を抱く。  そして……  そんな感情を抱いてしまった自分に呆れてしまう。  この結婚にお互いの気持ちなんていらない。  だから、この方と結婚して仮に浮気をされたとしてもわたくしの心は痛まない。  この方の子どもを身籠って、その子どもを立派に育て上げることがわたくしの役目。  この殿方のお名前は"星野 聖時(ホシノセイジ)"さま。  わたくしの夫になる方。  この方に嫁ぐわたくしは"星野 悠子"になるのですわ。  凛と背筋を伸ばして気合を入れた。  伊部に頼んで星野外科病院を見に行くことにした。  将来形を変えるといえど、わたくしの病院にもなる。  今の現状を知っておくのも何かの役に立つかもしれない。  そう思いましたの。  伊部が運転するメルセデス・ベンツに揺られて到着した病院は……  3階建ての年季の入った建物。  それでも、沢山の人が玄関を出入りしていて病院らしい活気に溢れていた。  わたくしはそこで……  太陽に出会う。  眩しくて  眩しくて……目が開けられない。  こんなに眩しく輝いている人が存在しているなんて思いもしなかった。
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