事務長と医者

15/25
前へ
/441ページ
次へ
 *****  7年前に事務長に就任して、その2年後に俺に秘書を付けた。  あまりにも業務が多忙すぎて、自分のスケジュールの管理がままならない。  明日の予定すらわからなくて、これでは仕事にならないと思ったからだ。  とりあえす、どんな奴でもよかった。  俺のスケジュールを管理してくれる人なら。  そう思って雇った50代のおじさん。  ……ダメだ。  やっぱり秘書の経験がある人物でないと。  そのおじさんは秘書の経験がないらしく、要領は悪いし、いつまで経っても俺の仕事を覚えられない。  だから、自分がするべきこともわからない。  ようは、使えない人材。  そのくせ、聖時と俺を比べる。  聖時が院長になって大丈夫か、どうして医者にならなかったのか。今からでも医学部に進んだ方がいいとかどうとか……。  余計なお世話も甚だしい!!  そんなことより仕事しろ!  仕事を覚えろ!くそジジイ!!  余計に俺の仕事は増えるし、イライラは募るし。  三か月の我慢が関の山だった。  その次に来た秘書。  秘書の経験がある30代の女性。  半年前まで俺の秘書として働いていたが……。  結構ウザい。  最低限の仕事はしてくれるから我慢して3年一緒に働いたが……。  知佳と付き合いだした頃から俺のプライベートにまで口を出すようになった。  知佳のことを悪く言ったり、前のおっさんと一緒で俺と聖時を比べる。  そのくせ聖時が帰ってくると猫なで声で寄り付くんだ。  あ~ウザい!!  キモイ!!  いい加減にしろ!!  グダグダ文句垂れるとか、言い訳するとか、女を武器にしてくるとか。  そんなの要らない!  どうでもいい!  俺が欲しいのは俺が言わなくても何でもやってのける有能な秘書。  ……そんな秘書……無理か。  有能な秘書はそれ相応の会社にすでに雇われている。  工藤に出会えたのは……  きっと奇跡だ。
/441ページ

最初のコメントを投稿しよう!

958人が本棚に入れています
本棚に追加