事務長と医者

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 知佳を待つ間に寄ったバーでたまたま知り合った。  工藤は名刺を渡してきた。  東洋製薬  専務秘書  工藤 清晴  それが工藤の肩書だった。  東洋製薬は製薬業界でもトップクラス。  もちろん星野も東洋製薬にはお世話になっている。  そんなトップクラスの製薬会社の専務秘書をしている工藤。    仕事にもさぞやりがいがありそうなもんなのに……。 「俺は……  もっと自分を必要をしてくれる人と仕事がしたい。」  工藤のその心の叫びを俺は溢すことなく受け止めた。 「俺はもっと……  パートナーとして一緒に働いてくれる秘書が欲しい。」  工藤の名刺を握りしめた。 「……東洋製薬ほどの給料を出せるかはわからない。  だけど、退屈させない。  俺の秘書になってくれないか。」  チラッと見えた工藤の手帳は秘書らしく真っ黒で、隣に置いてあるカバンにはタブレットが入っていた。    工藤は……  根からの秘書だ。  コイツが欲しい。  工藤の手にはウイスキーの入ったコップ。  丸い氷がカロンと音を立てた。  工藤と視線が絡む。 「……いつから……働けば?」  そのパーフェクトな返答に顔が綻ぶ。  俺のテンションは急激に上昇する。  俺は工藤の肩を叩いた。 「明日からでも来て欲しいくらいだ。」 「はは。急ですね。」    工藤は小さく笑う。  俺が手に入れた最高級にいけてる秘書だ。
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