事務長と医者

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「俺は事務長だけど、事務長以外の仕事もゴチャゴチャしてる。  どこかのME機器が壊れたとかPHSに連絡が入れば、その部署に行くし、電球が切れれば交換にも行く。  事務員の就職面接は俺がしているし、院内で起きたアクシデントなんかも俺のPHSにかかってくる。  医療安全とか病院経営の研修なんかあれば、出張で出かけるし。  後は事務職一般。  給料とか、職員の慰安旅行とか、健康診断……」 「ちょっと待ってください!」  俺の一方的な言葉に工藤は声を張った。 「……なんだ?」 「それ……今まで一人で全部してたんですか?」 「そうだけど……。  都合が悪いか?」 「悪いっていうか……。  星野さんは仕事を抱えすぎです!  そんなの、もう一人星野さんがいたって足りませんよ!」 「そうだよ!  だから、お前に来てもらったんだ。」  工藤は豆鉄砲でも食らったみたいな表情を見せた。  話していれば、また俺のPHSが鳴り響く。  ポケットからPHSを取り出して耳に押し当てた。 「はい、星野。  ……ああ、わかるよ。……ああ。……そうか、で?  ……ああ。まだそんなこと言ってるのか。」  話をしながら腕時計に視線を向ける。 「ああ、わかった。  その件は俺が担当する。  話がややこしくなるから、他の奴は対応するな。」  それだけ念押しして電話を切った。  工藤は俺の顔をガン見してくる。  ふ~と、大きく息を吐きだした。 「おととい解決したと思ったクレーム患者からの再クレームだ。  まあ、クレームはあった方がいい。」  工藤に向かってニカっと笑う。
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