事務長と医者

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「とりあえず、俺はその対応に外来に行ってくる。  昼から、何社かエコーの機械のプレゼンにくるんだ。多分。  ……だけど、時間も業者も覚えていない。」  シレッと言うと、工藤は大きく目を見開いて。    なんなら、零れ落ちそうなくらい。 「ククク……。」  思わず笑いが漏れた。 「星野さん!」 「煌人。」  工藤の大きな声音に静かな声音で返した。 「……え?」 「名前でいい。  そのうち弟も妹も帰ってくる。  そしたら、星野だらけだ。」  工藤は表情を引き締めた。 「……それじゃあ、煌人さん……」  遠慮気味に俺の名前を口にした。 「そんな曖昧なスケジュールで大事な約束忘れたりしないんですか!?  朝礼で見た顔ぶれで事務員は全員ですか?」 「そうだ。」 「あの倍は人員を増やすべきです。  事務の中で大まかに課を分けるべきだ。  それをあなたが統括する。  でなけりゃ、事務長のあたなが潰れる。  この病院は事務長の星野煌人がいるから成り立っている。  事務部門がじゃない、この病院がだ!」  工藤の芯を突く言葉に……  ドクンドクンと心臓が音を大きくする。 「あなたの仕事、半分にしてみせますよ!  それが俺がここに来た意味だ。」  ああ……  本当にヤバイ。  俺の直感は大当たりだ。 「あはははは!」  俺よりも背の低い工藤の肩をバシバシと叩く。 「期待してるよ、工藤。」  俺は工藤に上機嫌な笑顔を向けた。 「俺の部屋には自由に出入りしてくれていい。  そこで待っていてくれ。  1時間はかかるかもしれない。」  そう告げて、外来へ急いだ。
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