事務長と医者

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「あははは!  やっぱり最高だな。」  工藤は俺の態度にムッとした表情を見せた。  カレンダーにベタベタと貼り付けていた今にも剥がれ落ちそうだったメモの類が一切なくなった。  俺のテーブルの上もここ半年は見たことがないくらい綺麗に片づけられていて。  この一時間足らずの間に工藤は俺の予定を把握したに違いない。 「工藤のデスクか。  欲しいなんて言った秘書はお前が初めてだ。」  その言葉に工藤はまた瞳を大きく見開いた。  すぐ顔に出るな、コイツは。  それすらも面白い。 「すぐに準備してやる。  来い。」  俺は事務室を出て、隅に置いていた空いてるデスクに向かう。  他の事務員は俺と工藤の姿をチラチラと横目で盗み見ている。  それをよそに、そのデスクを動かす。 「え~、ちょっとみんな、手を止めてくれ。」  俺の張った声音にみんな手を止めて顔を上げた。  ここに居るのは全員で12名。  事務員が人材的に少ないことは俺もわかっている。  事務内からはあまり不満の声がないし、俺がそれだけ仕事をすればいいだけの話だから、この7年この人数でやってきた。 「工藤にデスクをやる。  事務長室に一番近いこの位置。」  一列に6台の机を向かい合わせに置いている。  それが全部で12台。  事務長室の一番手前側のデスク二つの側面に工藤のデスクをくっつける形で置く。  俺はデスクを置いたこの位置に指をさした。 「書類は今まで俺のデスクに出してもらっていたが、統一して工藤のデスクに提出するように。  あと、俺が居ないときに困ったことがあれば、工藤に連絡するように。  工藤には仕事用に携帯を一台持たせる。  その電話番号を後でメールで送る。  確認しておくように。  以上だ。」 「わかりました。」  事務員からワラワラっと返事が返ってきた。
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