事務長と医者

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 お嬢様は絶対に前の段差に気が付いていない。  嫌な予感がして俺は駆け出した。  俺の最近の予感は冴えてる!    案の定お嬢様はその段差に足を取られた。 「キャア!」  お嬢様の身体が前に傾いていくのがスローモーションのようで。 「危ない!」  俺はそのお嬢様の身体を抱きとめた。  こんなところで転んで怪我でもされたら大問題だ。  俺の頭を一番によぎったのはソレだった。 「悠子様!!」  お嬢様の後ろから男性の驚いた声音が聞こえてきた。   「大丈夫ですか?」  お嬢様はゆっくりと俺の腕から顔を上げた。  ドクンッ!!  大きく心臓が跳ねた。  ただの美人じゃない。  相当綺麗な人だ。  絡んだ視線はすぐに細められた。  ふわふわっと舞う長い髪が俺の手に触れる。  細くて柔らかな腕の感触をしっかりと感じて……。 「申し訳ありません。  やっぱりここの段差は危険だな。」  そう声をかけながら、お嬢様の身体を起こした。 「あ……有難う」  お嬢様の声音は色気を含んだ甘ったるい声音だった。
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