一輪の真紅の薔薇

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 ゆらゆらと風にゆらめくレースのカーテン越しに玄関ポーチに視線を向けた。  しばらくすると聖時と彼女が現れた。  彼女は視線を下に這わせたまま聖時に肩を抱かれて、石畳を歩いて行った。  ……あの二人は……  これからどうするつもりなんだろうか。  無責任にもそんなことを考えてしまう。  どれだけ聖時が親父に彼女以外と結婚はしないと言ったところで、親父はそれを一生受け入れないだろう。  "『お前の人生はお前だけのものじゃない。』"  "『聖時の人生だけは誰も代りがいない。』"  親父とおふくろの言葉が俺の頭の中をぐるぐると支配していく。 「……聖時……  ……わるい……俺の……」  小さな声で呟いて拳を窓にドンと押し当てた。  ───俺のせいだ。  目を強く瞑って俯いた。  これからやってくるこの二人の最悪の結末に……。  俺は……ひとつの決意を固める。  聖時……  俺は鬼になるよ。  お前に嫌われたってかまわない。  俺に残された道は  星野を守ること以外にもう……  何もない。  暗闇に流れる星よ……  天罰を与えるのなら  聖時にではなく……  どうか俺に……。
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