あてがわれた婚約者

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「悠子様!!」  伊部の驚いた声音が後ろから聞こえてきて。   「大丈夫ですか?」  その穏やかではつらつとした声音にドクンと心臓が跳ねた。  顔を上げてその方を見上げたのですわ。  ……眩しくて。  その殿方の空には太陽が煌々と輝いていて。  逆光なのか、その方が眩しいのか…… 「申し訳ありません。  やっぱりここの段差は危険だな。」  そう言いながらわたくしの身体を起こしてくれた。  力強くて大きな手。  わたくしは……  この手に守られたのですわ。  逆光で顔が見えなくて、その変わりにわたくしの意識に残ったのはその方の優しい声音と力強くて大きな手だった。 「あ……有難う」  その方はゆっくりとわたくしから手を離した。  そして隣にいる男性に視線を向けた。 「工藤、至急業者に電話しろ。  それとここ周囲を通行禁止に。」 「わかりました、煌人さん。」  ……きらと……さん……? 「お嬢さん、お怪我はありませんか?  本当に申し訳なかった。  ここの段差は至急対応させてもらいます。」    決断力の速さと穏やかではつらつとした声音。  それだけでわたくしの心臓の鼓動がドクンドクンと強く脈打つ。 「お気をつけてお帰りください。  それでは失礼させていただきます。」  軽く頭を下げるとその方は病院の中へと吸い込まれていった。  わたくしは振り返ってその方の後姿を見送る。  キリッとしたスーツに身を包んだ背の高い殿方だった。  
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