一輪の真紅の薔薇

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 *****  季節は流れて10月。  日曜日は基本的には休み。  それでも、何かあれば休みなんて関係なく俺の仕事用の携帯は鳴り響く。  休みも時間も関係ない。  その日曜は朝から電子カルテの調子がおかしいと病棟から俺の携帯に電話がかかってきた。  朝ごはんもそこそこに、スーツに着替えて病院へ向かった。  数台はきちんと作動しているパソコンがあったから、そこまで業務に支障をきたさずに済んだが、朝からシステムエンジニアに電話をかけてパソコンの調整をしてもらったりして、修理が完了した時には、気が付けば昼だった。  工藤は必ず土曜と日曜の朝9時に一度連絡してくる。  工藤は基本的に土日が休みだ。  だから、勝手に出勤している俺のことなんてほっといたらいいんだ。  それなのに、工藤は俺を一人で働かせるのを異様に嫌がる。  朝の9時に連絡してきて俺が仕事していないか確認してくるんだ。  「電子カルテのシステム異常が出たが、システムエンジニアを呼んだから工藤は来なくていい。」って言ったのに。  いつの間に来たのか、気が付けば俺のそばに寄り添っていた。 「お前が好きで勝手に来てるんだからな、給料はやらねえぞ!」  工藤を休みの日にきちんと休ませるために言ったのに。 「構いません。」  即答してきやがった!  しかも、真顔で!!  こうゆうとこ……全然かわいくない。    だけど、俺のして欲しいことをサラッとやってのける。  "痒い所に手が届く"  まさしくそれ。  電子カルテの件が一段落して「昼食って帰るか!」そう工藤に声をかける。
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