一輪の真紅の薔薇

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「工藤、だからそれは……」 「俺にも譲れないものがある。」  工藤の強くて真っすぐな声音。 「…………」  それ以上言い返す言葉すら与えない。 「俺はこの秘書の仕事に誇りをもっています。  俺のことが必要ないのなら今後一切土日に出勤はしません。  だけど、ただ俺のことを思ってのことなら……。  だったら、俺を必ず呼んでください。」  工藤の秘書魂には……完敗だな。 「……わかった。  その代わり、彼女が出来たら報告しろよ!」  工藤にニッと笑って、テーブルの端に置いてある伝票を手にする。 「だ、だからそれは!!」  工藤の顔が少し赤に染まる。 「あはは!  帰るぞ。」  会計を済ませてラーメン屋を後にする。    自宅に戻って着替えてから知佳に連絡するつもりだった。  昨夜『明日は会えると思う』そう知佳にはメールしていたから。  レクサスに乗り込んでプライベートの携帯をチェックすると知佳からメールが来ていた。  『今日、大丈夫?   煌人に会えるの楽しみにしてるからね。』    1年以上続いた人は知佳が初めてだ。  知佳は俺が忙しいことをよく理解していて、よくできた彼女。  平日の日は夜になるから、千佳の部屋に直行で、会えなかった間のことを話しながら千佳の作った料理を食べる。  その後シャワーを浴びて、知佳を堪能する。  千佳の部屋を出るのはいつも午前様。  だから、休日に会う時くらいは知佳をどこかに連れて行ってやらないと。  1年以上こんな感じで……  そろそろ愛想つかされるんじゃないかと不安もある。
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