一輪の真紅の薔薇

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 事務長に就任して以降忙しすぎて、彼女が出来てもそれで振られてばかりいる。  ……それならそれでもいいのかもしれない。  知佳だっていい歳だ。  結婚するつもりもない男にいつまでも縛られているのも、きっと知佳の為にはならない。  どっちにしても……  俺の自由な時間もあと2年だ。  そのことも……知佳に伝えなきゃいけないだろうな。  ふ~と大きく息を吐きだした。  家のガレージにレクサスを駐めて、車から降りる。  玄関を開けると「煌人さんお帰りなさい」いつもの優しい節子さんの声が出迎えてくれた。  節子さんに視線を向けて「ただいま」そう答えた。  玄関には見覚えのない品のいいヒール。  来客用スペースに車は駐まっていなかったけどな。 「……凛子?」  俺がその見慣れないヒールを見ながら呟いたから 「いいえ、お客様です。」  節子さんは俺にそう言葉を返してくれた。 「……お客……さま……」  って?  誰に?  この家には凛子も聖時もいない。  俺のお客じゃなければ……。  こんな若い女性が履きそうな綺麗なヒール。  おふくろの?  ……まさか……親父?  俺の表情はきっとドンドン蒼白になっていっているに違いない。  まさか……  親父、浮気でもしてたんじゃないだろうな。  それがおふくろに見つかって? 「……お客様って……  どっちに?」  俺は人差し指を右と左に振る。    玄関に対して左手は応接室。  右手が俺たちの部屋やリビングがある。 「リビングですよ。」  節子さんはにこやかに答えた。  そんな爽やかな笑顔向けてる場合じゃないんじゃないの!?  節子さん!!  心の中で節子さんに叫びながら、とりあえず靴を脱いだ。  節子さんのコーヒーを飲んで、さっさと着替えて知佳のところへ行こう。
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