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そんな私が、彼と再会をしてから、すでに季節がひとつ変わろうとしていた。
そして今年は、どうやらしっかりとした梅雨を迎えたらしい。
六月の声を聞いて間もなく、天気は、どこかはっきりしなくなった。
木綿糸くらいだったり、絹糸くらいだったり。
雨は、降ったり止んだり。
毎日どんよりとした曇り空の下、
空気は、いつもたっぷりと湿り気を帯びている。
結局あの日、久しぶりに田村と食事をした私は、
やっぱり彼に母のことを愚痴っていた。
そして彼は、それを嫌がるでもなく、特に深刻になるでもなく、
あの調子で、やんわり包むように聞いてくれた。
それから、ひと月あまり。
しかし、あの日のお礼のやり取りの後、
短いご機嫌伺い程度のメール交換はあっても、
連絡らしい連絡は取っていない。
いや。
現実は、そんな余裕など心にも時間にもなかったというべきだ。
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