事の始まり

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お袋の七回忌が終わって半年ちょっと経った頃、親父がボソッと言った。 会わせたい人が居る、と。 まぁ俺が成人して社会人になったからといって親父もまだまだ老け込むには早いし、再婚を反対するつもりも基本的には無い。 少し寂しい気はするけど、あってもいい話だ。 けど本当は、息子としてはやっばり衝撃的な発言だった。 「ふぅん…。それで?」 俺はなるべく動揺を隠すように、テレビを視ながら気の無い返事をした。 「今度の土曜日、空けておけ。」 土曜日って、明後日じゃないか…。急だな。予定が入ってたら、どうするつもりなんだよ。 実際、予定は入っていた。 残念ながらデートとかじゃなくて、休日出勤だけど。 「俺、休日出勤だよ?」 簡単に伝える。 「夜、空けておいてくれたらいい。」 簡単に、応答がある。 まぁ、いつもの調子だ。 「分かった。」 俺と親父の会話は、大事な事の筈なのに簡単に終わった。 土曜日の朝の、出勤前までは…。
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