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「よぅ…」
台所に入って、声を掛ける。
「まだ冷蔵庫にあるけど、飲む?」
佐藤はそう言うと、軽く指し示す様にペットボトルを上げた。
「いや、俺は───」
冷蔵庫の中から、缶チューハイを取り出して見せた。
大の男がと笑われかねない、フルーツフレーバーのやつだ。
しかも甘い甘い、イチゴの…。
あ、今、笑ったか?
仕方ないだろ?好きなんだから…。
俺は佐藤の向かいに座り、プルトップを開けるとそのまま口をつけた。
「あのさ…」
気は重たいけど、口を開く。
「どこで、親父と知り合ったんだ?」
もう少しで親父のどこが良かったんだと訊きかけた言葉を仕舞い、訊く順番を考えながらやっと言った。
「あれ?何も聞いてないの?」
この物腰の柔らかさ、やっぱり俗に言うネコって立場なんだろうか?
「親父、自分の事、あまり話さないし」
というか、お袋との馴れ初めだって親父の口からは聞いていない。
お袋から大恋愛だったと聞いたと、お袋の葬式の後で兄貴から聞いたぐらいだ。
憮然とした態度しか見ていないから、想像つきにくいけど。
しかも、今度は───。
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