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#2[解けないパズルなんてこの世には]
《1/2》
「さあ。そろそろはめ込もう」
「新しいピースを」
真っ暗な部屋に、不敵な笑みが一つだけ浮かんだ。
~捜査室~
「何か、本当に変わった事件ですよねー」
僕は背もたれをギリギリまで倒しながら、知恵の輪と見つめ合っていた。
「シロ…お前真剣に考えてんのか?…」
今にも爆発しそうな中野さんの視線を真横で感じた僕は、恐る恐る背もたれを戻し始める。
「真相を掴むまで、事件は終わらないんだぞ。それに今回の事件は普通じゃない」
僕は、知恵の輪を意図も簡単に解き、少し誇らしげな顔で言葉を返した。
「大丈夫ですよ。解けないパズルなんて、この世には存在しませんから」
中野さんは少し呆れた顔をして、僕が解いた知恵の輪を手に取り言った。
「それじゃあ、今から十人の容疑者全員に事情聴取だな」
僕は、いつも通り〝熱血刑事〟な中野さんの言葉に答えるように、依然ボサボサな髪を指に絡ませた。
~取調室~
「…これで、最後の一人ですね」
疲れ果てる僕とは正反対に、中野さんはギラギラした目をしていた。羨ましいくらいに。
そして、取調室の扉を開けた僕らの目に映ったのは、マジックミラーの奥で大粒の涙を流しながら無実を証明する少年。
「本当にやってないんです!信じてください!!!」
「この子もか…」
中野さんは、大きめのため息をつき、続けて僕に聞いてきた。
「どうだ?見えるか?」
少年の目を見つめながら、僕は中野さんの問に答えた。
「この子も、嘘を言ってるようには見えませんね。やはり十名全員が、自分の意志で殺害した訳では無いと思います」
「あ、あのー、すいません。どうしてそんな事言い切れるんですか?…」
オドオドした監視役の捜査員が、不思議そうな顔をして僕らの間に入ってきた。
「ああ。すいません。こいつは、顔を見ただけで、その人が嘘を言っているかどうかが分かるんですよ」
昔から心理学だけには興味があった僕は、学業の全てを〝それ〟に注ぎ込んでいた。
そのお陰で、気付けば中学生の頃から嘘を見破れる様になっていた。
「まあ、当然周りからは気味悪がられましたけどね」
僕は苦笑いをしながら頭を掻いた。
「はあ…。なるほど…」
「で、でも、指紋や監視カメラ等の証拠は揃っているんですよ?」
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