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#1 [ただのチュートリアル]
僕は、いつもと同じ夢を見ていた。
真っ赤に染まった街。
仮面を被った人々で溢れる街。
もうこの街は…
「…おい」
「おい!!!」
脳天に酷い衝撃を受けた僕は、咄嗟に飛び起きた。
「シロお前いつまで寝てんだ!捜査会議始まるぞ!!」
「痛いなあもう…。夜通し調べものしてたんだから、仕方無いじゃないですか…」
「あと、〝シロ〟じゃなくて名前で呼んでくださいよ」
ボサボサに絡まった髪を、自らの手でもっとぐしゃぐしゃに絡ませながら、まだ完全に開かない口で意見した。
「つべこべ言うな!さっさと準備しろ!先行くぞ!」
THE体育会系のこの人は、僕の上司の中野さん。
この人を紹介するとしたら、〝熱血刑事〟という一言だけで足りてしまう。
ちなみに、僕がシロと呼ばれている理由は、肌が白いから。
ただそれだけ。
僕は大きなあくびをしながら、中野さんの後をついていった。
捜査会議の内容は、先日起きた未成年による連続殺人事件についてだった。
たった一日で約三十名が殺害され、十名の未成年の男女が逮捕されたこの事件。
世界でも前例の無い異例の事件が、ここ東京で起きていた。
そして、この事件の不可解な点として、三つの事が挙げられた。
一つは、容疑者が全員未成年であるという事。
二つ目は、容疑者全員が口を揃えて容疑を否認しているという事。
そして三つ目の最大の謎は、十件の被害全てが、東京都第一区から三区の範囲内で同時刻に起きたという事。
凶器のカッターナイフからは、それぞれ容疑者の指紋が検出されており、更には大勢の目撃者や監視カメラの映像という紛れもない証拠が揃っていた。
それなのに、今も頑なに容疑を認めないのだという。それどころか、カッターナイフを所持していた事、犯行に及んだ事、その全てを覚えていないと言っているらしい。
三つ目の不可解な点については、全捜査員がただ頭を抱えるしか無い程の謎だった。
「まるで、誰かに操られているみたいだ」
この時、僕はまだこの事件の〝本当の〟怖さに気付いていなかった。
そして、これはゲームのチュートリアルにしか過ぎない事を、まだ誰も知らなかった…。
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